パフォーマンスを支える燃料 -熱帯地域でのトレーニング中の水分補給と食事-

投稿者:青木 優子

熱帯地域でトレーニングする際の適切な水分補給と食事

記事 by  Gustavo Padilla (@darksidedivers)
訳・編集 by 青木 優子

あなたが熱帯の海でダイビングのトレーニングに臨むとき、何をチェックしますか?まずは器材?
もちろんそれも重要ですが、その前に自分自身の体調のチェックはしましたか?
熱帯地方のような高温多湿の環境では、水分と栄養補給の管理が重要です。それはパフォーマンスの質をも左右する要因にもなるのです。
「いつも通り潜っているのに、今日はなぜか体が重い」
「疲れ具合がいつもと違う」
その背景にはもしかしたらこのような原因が潜んでいるのかも。

それでは一つずつ見ていきましょう。

目次
・静かな脅威:脱水と減圧症
・水分補給だけでは不十分:電解質が必要な理由
・食べ物は燃料である:グルメという名のご褒美ではない(ダイビング中は)
・トレーニング中に何を食べるか
・ダイビング後の回復の重要性
・メンタルの明晰さは腸から始まる
・あなたはアスリートである-アスリートのように行動する
・最後に:環境を尊重し、自分の体を大切に

静かな脅威:脱水と減圧症

特に発汗量が多く、それに気づきにくい温暖な気候において、脱水症状は減圧症のリスクを高める一因として長年認識されてきました。それは脱水症状になると血漿量が減少し、ダイビング後に体内の窒素を効率的に排出することが難しくなるからです。
Frontiers in Physiology(1)誌に掲載された2020年のレビューでは、脱水症状はダイバーの「不活性ガス負荷と気泡の形成を悪化させ」、特定の条件下で減圧症のリスクを高める可能性があると結論付けられました。
つまり、血液が濃く循環が悪いと窒素の排出が遅くなり、組織内で気泡が形成されるリスクが高まる、ということです。

☑️ヒント☑️
・喉が渇く前に飲む:喉の渇きは、すでに脱水症状の後期段階の兆候です。
・尿の色をチェック:淡い麦わら色なら、十分に水分が補給されているサインです。
(編集者注:私は「淡い麦わら色」がピンとこなかったので調べてみました。気になる方はこちら


水分補給だけでは不十分:電解質が必要な理由

水分補給は水を飲むことだけではありません。特に大量に汗をかく熱帯気候では、電解質(ナトリウム、カリウム、塩化物)も補給する必要があります。
米国陸軍環境医学研究所(2)による研究によると、高温下での運動中に電解質のバランスが崩れると、水分摂取が適切であっても、疲労が著しく増加し、意思決定能力が低下することが判明しました。
汗には、筋肉の機能、神経の信号伝達、体液のバランスに不可欠なミネラルであるナトリウム、カリウム、塩化物が含まれています。

☑️解決策☑️
・水に電解質を混ぜて摂取する:持ち運びやすく、効果も高く、味も良くなります。
・砂糖の入ったスポーツドリンクは避ける:水で薄めたものであれば可。

❓電解質(イオン)について詳しく知りたい方はこちら
(参考までにいくつか商品も載せておきます。
 ・ポカリスエット イオンウォーター(甘さ控えめ)
 ・ファイン イオンドリンク各種(砂糖ゼロ、ですが難消化性デキストリンが含まれているので過剰摂取するとお腹が緩くなる可能性あり)

食べ物は燃料である:グルメという名のご褒美ではない(ダイビング中は)

メキシコや熱帯地方でトレーニングをしていると、揚げたタコスやスパイシーな屋台料理に舌鼓を打ちたくなります。もちろん、トレーニングコースの後に地元の料理を楽しむならいいですね。
トレーニング中は、何を食べるかが重要です。脂っこい食べ物や辛い食べ物は、消化不良、炎症、または下痢を引き起こす可能性があります。これらの問題は、体の水分と電解質の吸収能力を低下させ、脱水症状を悪化させます。
不健康な食生活はまた、炎症を悪化させ、酸化ストレスを増加させ、あなたの減圧の安全性に影響を与える可能性があります。炎症と減圧ストレスの関連性は、スプリット大学医学部の研究でも指摘されています(3)。
ダイバーが食事のせいでトレーニング日程を無駄にしてしまうのを何度も見てきました。胃のむかつき、吐き気、膨満感は単なる不快な症状なだけではありません。潜ることができず、トレーニングカリキュラムを台無しにしてしまうこともあります。


トレーニング中に何を食べるか

⭕️摂取する⭕️
– 赤身のタンパク質(鶏肉、卵、豆腐、マメ科植物)
– 複合炭水化物(米、ジャガイモ、オート麦)
– 水分を補う野菜(キュウリ、レタス、ピーマン)
– 健康的な脂質(アボカド、適度なナッツ)
– あなたの腸が慣れている一貫した食事

❌避ける❌
– 揚げ物全般
– 非常に辛い食べ物
– トレーニング期間中の馴染みのない料理や屋台の食べ物
– 甘いスナックや飲み物

ダイビング後の回復の重要性

ダイビング前の準備だけでなく、ダイビングとダイビングの間にもしっかりとした回復が必要です。マラソンのトレーニングのように考えてみてください。回復は、努力そのものと同じくらいパフォーマンスに影響します。

ダイビング後、あなたの体に何が必要か:
☑️電解質を含む液体:汗を補い、循環を促進する
☑️タンパク質と炭水化物:筋肉修復とエネルギー補充
☑️抗炎症食品:酸化ストレスを軽減する

⚠️また、トレーニング中はアルコールを控えましょう。適度な飲酒でも脱水症状を引き起こし、回復を遅らせます。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は、アルコールが利尿作用を持ち、体液の損失を促進することを確認しています(4)。


メンタルの明晰さは腸から始まる

私たちは栄養は身体の燃料だと考えがちですが、脳の燃料でもあります。特にケイブやオーバーヘッド環境(閉鎖空間)でのダイビングのトレーニングでは、明晰さ、意思決定、そしてストレス下での冷静さが求められます。
栄養不足と脱水症状は、認知機能、反応時間、そして記憶力を低下させます。2018年にAmerican Journal of Clinical Nutritionに掲載された研究(5)によると、軽度の脱水症状でさえ、注意力と短期記憶力に悪影響を与え得ると示されています。
腸の調子が悪いと、脳にも悪影響を与えます。自然で栄養価が高い食事を心がけ、思考力も整えましょう!

あなたはアスリートである-アスリートのように行動する

ダイバーは自分自身を探検家や冒険家と捉えることはありますが、必ずしもアスリートとは考えていません。それは間違いです。
装備を着けて長時間潜り、ストレスに対処し、器材を持ち上げ、水中で集中力を維持しているなら、あなたは戦術的なアスリートのようにパフォーマンスを発揮していることになります。そして、あらゆるスポーツのトップアスリートと同じように、体内に取り入れるものはパフォーマンスに影響を与えます。
アスリートのようにトレーニングするということは、食事と水分補給をギアの一部として扱うことを意味します。それはパフォーマンスと安全にとって不可欠です。


最後に:環境を尊重し、自分の体を大切に

熱帯地方でのトレーニングは、ダイバーの特権であり、同時に挑戦でもあります。あなたは水中だけでなく、精神的にも肉体的にも限界に挑戦することになります。パフォーマンス、安全、そして成功を真剣に考えるなら、まずは綿密な準備から始めましょう。
⭕️水と電解質で、水分をしっかりと補給しましょう。
⭕️集中力とエネルギーを高める、自然で栄養価が高い食品を食べましょう。
⭕️ご褒美の食事は認定取得後までとっておきましょう。頭痛や胃のけいれんに悩まされることなく、より楽しむことができるはずです。

あなたはレベルアップするためにここにいます。そのプロセスを心身共に自分のものにしましょう。

Gustavo Padilla
Tavo PC
TDI #29259
Instagram:@darksidedivers

出典

1.Frontiers in Physiology (2020)
2.US. Army Research Institute via Journal of Nutrition (2017)
3.University of Split School of Medicine (2020)
4.CDC – Alcohol Facts
5.American Journal of Clinical Nutrition (2018)


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