日本で一番有名な沈船ポイントと言えば、沖縄のエモンズ。
そう答えるダイバーは、きっと多いはずです。
しかし驚くべきことに、長い間エモンズには正式なマップが存在しませんでした。
エモンズ発見から21年後の2021年、
ついに一人のダイバーが、その全貌をマップという“形”にします。
その人物は、アクティブなTDIテクニカルダイバーであり、
私の友人でもある——若狭金吾さん。
私はマップ作成の過程を間近で見ていました。
ですが、失礼を承知で言えば、当時こう思っていたのです。
「……なぜ、そこまでエモンズなんですか?」
今回のインタビューではその理由を含め、多岐にわたる話を伺い、
先ほどの私の疑問も、解決しま・・・
さて、解決したかどうか。ぜひ最後までお付き合いください。
——まず率直に聞きたいんですが、どうしてそこまでエモンズに惹かれているんですか?
「よく“エモンズが好きなんですよね”って言われるけど、
正確にはエモンズと※直協(九八式直接協同偵察機)なんですよね。
もしエモンズだけだったら、ここまで思い入れはなかったと思う。」
(※エモンズは太平洋戦争末期の沖縄戦で、日本軍の特攻機5機に攻撃を受けて大破し、僚艦エリソン(USS Ellyson, DD-454/DMS-19)の砲撃で海没処分された。エモンズのそばにはその時特攻した九八式直接協同偵察機のエンジンや機体の一部が今も残っている。)
——直協とセット、という感覚なんですね。
「そう。世界中でレックダイビングをしてきたけど、
同時期に沈んだ敵味方の戦争遺物が、同じ場所にあるっていうのは、多分だけど、エモンズしかないと思う。
しかもディープSPを持っているダイバーなら、1本のレクリエーショナルダイブで見られる。」
——なるほど。言われてみれば。
「有名なポイントだけど、レアさの本質があまり語られてない気がする。
本来はそこがレアなんだよ、こんなポイントは他にないんだよって説明すべきなのに、
そこに目が向けられていない。」
エモンズが見つかってから20年以上。
長い間きちんとしたマップは存在しませんでした。
「それが一番もどかしかった。」
——マップを作ろうと思ったきっかけは?
「潜る前に説明されても、正直よく分からないことってありませんか?
潜った後も、“あれ何だったんだろう”で終わっちゃう。
でもマップがあれば、潜る前に予習できるし、
潜った後にも振り返ることができる。」
——確かに、それだけで体験の質が変わりますね。
「誰もやらないなら、じゃあ自分で作るかって思ったんです。」
最初は好きだから潜っていただけだった、と若狭さんは言います。
「でも結果的に、
いろんな人が見てくれるようになって嬉しいですし、
大げさに言えば啓蒙活動なのかなと。」
「アメリカ人ダイバーは
エモンズと神風があるって、みんな知ってる。」
——日本人より詳しいくらいですよね。
「在沖のベースで潜ってる人たちは、当たり前に知っています。
だからみんな、あそこにのめり込む。
本来、日本人こそもっとのめり込んでも良い場所なのに、
そこがずっともどかしかった。」
——直協についても、ずっと探していたんですよね。
「エンジンとかランディングギアは沈んでるのに、
機体が無いわけがないと思っていました。」
長年何かあるのではないかと探し続け、
2024年7月6日、その瞬間が訪れます。
若狭さんが海底で発見したのは、砂に半ば埋もれた人工物。
初見では正体不明でしたが、翌日にも再び同じ場所にダイビングを敢行し、
決定的な証拠となる写真を撮影。
写真は九州大学の研究チームに送付され、解析の結果、見解が示されました。
こうして若狭さんは、九八式直協機の翼の発見者となったのです。
ですが、それで満足はしていません。
「ということは、他にもあるはず。
だから今でも探していますよ。」
若狭さんのそんな活動に目を留めたのが、
シンガポールのニュースネットワークCNAでした。
——シンガポールの番組からオファーが来た時は?
「最初から受ける気でした。」
CNAが制作する番組のテーマは
“Hobseession(ホビー+オブセッション)”。
ホビー(趣味)とオブセッション(使命感)を掛け合わせた言葉で、
趣味を使命感レベルまで突き詰めている人を特集する内容です。
「エモンズのマップを作ったこと、
直協の翼を見つけたこと、
祖父が陸軍航空隊だったこと、
この3つを話したら、“あなたしかいない”って。」
——出演を即決した理由は?
「エモンズと直協を世界に知ってもらうチャンスだと思ったからです。」
神風という言葉は、世界中で知られています。
「神風によって沈んだアメリカの駆逐艦がある」と知れば、
世界中のレックダイバーが興味を持たないはずがない、との気持ちから
「オーバーツーリズムの心配はあるけど、
それ以上に、知られてなさすぎる。」
と語ります。
——レックダイビングをここまで好きになった理由は?
「やっぱり祖父の影響が一番大きい。」
職業軍人だった祖父は、陸軍航空隊に所属し、
最終階級は陸軍大尉。教育部隊長だったことも後から知ったそうです。
「もしかしたら、特攻に関わっていた可能性もある。
でも生きて帰ってきてくれたから、
俺は話を聞けたし、今こうして潜っている。」
直協が陸軍機だったこと。
エモンズが、その直協によって沈んだこと。
「その共通点は、やっぱり大きいですよね。」
——最後に。
「エモンズは、
“有名なダイビングポイント”で終わらせていい場所じゃない。
1本のダイブで、戦争の両側を見ることができる海。
その価値をもっと多くの人に知ってもらいたい。
沖縄には陸上戦跡もたくさんあるけど、同じように海底遺跡も保存され、語られるべきだと思っています。」
そのために若狭さんは今も潜り続けます。
話を聞き終えた今、私があのとき密かに抱いていた疑問は、もうありません。
読後、あなたにもエモンズという存在が、少し違って見えませんか。
✴︎エモンズのマップはこちらから、フリーでダウンロードできます。
ただし、画像の改変や有償での配布はしないでください。
沈船 エモンズ オリジナル 詳細 マップ ダイビング |古宇利島|沖縄| @ww2diver | Pacific War Wrecks
https://www.pacificwarwrecks.com/ussemmons
沖縄県古宇利島に沈む沈船エモンズ (USS Emmons, DD-457/DMS-22)のオリジナル詳細マップ。「敵対した国同士の戦闘結果が1回のダイビングで両方見れる」世界でも稀で貴重な海底戦跡
✴︎若狭さんが特集されたCNAの番組はこちらからご覧になれます。
Hobsessions - I Discovered The WWII Kamikaze Plane Wreck In Okinawa: Life Of A Wreck Diver
https://www.channelnewsasia.com/watch/hobsessions/i-discovered-wwii-kamikaze-plane-wreck-in-okinawa-life-wreck-diver-5563601
Kingo dives WWII wrecks globally and Lilian photographs tiny sea creatures in Bali, each venturing to depths most never see. Together, they reveal a hidden underwater world shap...
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