【連載企画】減圧神話:パート3

投稿者:SDI TDI ERDI JAPAN

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減圧神話:パート3

By: マーク・パウエル


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この連載の[パート1][パート2]では、少し異なる観点から物事を考えさせるような神話について取り上げましたが、全体としてはかなり議論の余地のないものになったと思います。しかし、今回取り上げるテーマは、様々な教育機関やインストラクターが定期的に教えているにもかかわらず、神話であることが明らかになっているトピックなので、少し物議を醸すことになるかもしれません。

私がダイビングを学んだとき、3つのゴールデンルールがあると教えられました。

  1. 浮上中は息を止めない
  2. 一人でダイビングをしない
  3. 前のダイビングよりも深く潜らない

1980年代後半に学んだダイビングのルールや習慣は、多くの点で変わってきました。また器材は見違えるほど変わり、多くのトレーニング方法も変わりました。SDIは1998年に設立され、世界で初めてソロダイバープログラムを開始しました。これは、適切なトレーニングと装備、そして正しい考え方さえあれば、ソロダイビングが可能であることをダイビング業界に示したのです。ソロダイビングへのアプローチがどのように変わったかについては、こちら[https://vimeo.com/49259855]をご覧ください。

また、「前のダイビングよりも深く潜らない」という考え方(リバースプロファイルとも呼ばれる)も見直されています。過去5年、10年、あるいは20年の間に、安全上の理由から、前のダイビングよりも深く潜ってはいけないと教えられたのであれば、その情報は時代遅れの見解に基づいています。過去20年というのは、1999年に開催されたリバースプロファイルワークショップに基づいているからです。なんと、この情報は20年以上前から入手可能でした。

以下の情報は、私個人や特定のトレーニング教育機関の見解だけではありません。リバースダイビングワークショップはスミソニアン協会で開催され、DAN、AAUS、DEMA、ダイブトレーニングマガジンが主催しました。言い換えれば、これは正真正銘の科学的ワークショップであり、その結果は真摯に受け止められるべきなのです。

このようなワークショップは定期的に開催され、主要な原則を見直し、科学的勧告が今でも有効かどうか、あるいはより新しい証拠に基づいて更新する必要があるかどうかを確認することを目的としています。ワークショップは一貫した形式に従います。まず、現在のガイダンスに至る元となった元々のエビデンスを見直し、次により最近の証拠を評価し、最後に総合的なエビデンスに基づいて勧告を行います。今回のケースでも同じ手順を踏みましたが、当初の勧告の根拠となったエビデンスを見直す際に、興味深い発見がありました。このゴールデンルールを作るために元々使われていた科学的根拠がなかったのです。このゴールデンルールが生まれた背景をたどってみると、1974年のある教育機関のトレーニングマニュアルに、このゴールデンルールに関する最初の記述がありました。このマニュアルには、より深いダイビングを先に行い、その後に浅いダイビングをすると、テーブルに従って全体的な潜水時間が長くなると書かれています。これはまったくその通りで、ほとんどすべてのテーブルが同じ結果を示します。しかし、この時点では、それが安全上の理由であるとは示されていませんでした。その後、このマニュアルや他のトレーニングマニュアルは徐々にこの記述を強化し、最終的には「前回のダイブより深く潜ってはならない」という絶対的なルールになりました。しかし、ワークショップで判明したように、リバースプロファイルが「通常」のプロファイルよりもリスクが高いという科学的な証拠は元々存在しませんでした。


神話:前のダイビングより深く潜ってはいけない

さらにワークショップでは、このルールが導入されて以来、リバースプロファイルダイビングでDCS(減圧症)のリスクが高まることを示す研究は、その後行われていないことが確認されています。多くの商業ダイバー、科学ダイバー、そして多くの悪質なレクリエーションダイバーが、長年にわたってリバースプロファイルダイビングを行なっても、明らかにリスクが高まることはなかったからです。

疑念を払拭するため、ワークショップの所見と結論を以下に全文掲載します。

所見

  • 歴史的に見て、アメリカ海軍も商業セクターもリバースダイブプロファイルを禁止していない
  • レクリエーション、科学、商業、軍事ダイビングでリバースダイブプロファイルが実施されている
  • レクリエーショナルトレーニング組織によるリバースダイブプロファイルの禁止は、DCSのリスクが高まることを示す明確なダイビング経験には基づいていない
  • ノーストップリミット内でのリバースダイブプロファイルががDCSのリスクを測定可能に増加させるという説得力のあるエビデンスは提示されなかった

結論

40m(130ft)未満のノーストップ潜水および12m(40ft)未満の深度差でのリバースダイブプロファイルをダイビング業界が禁止する理由は見当たらない。

さらに詳しい情報やワークショップの詳細を読みたい場合は、英語の文献となりますが、最終報告書[https://repository.si.edu/handle/10088/2724]をご覧ください。


このことから、安全上の理由からリバースプロファイルを禁止する根拠はないことがわかります。もちろん、より深いダイビングを最初に行うことが良いアイデアである理由は他にもあるかもしれません。先に深く潜った方が、総合的なノーストップタイムが長くなることはすでに述べました。さらに、深いダイビングを先に行って一部のガスを使用することで、二回目の浅いダイビングを安全なガス限界内で行うことが可能になりますが、逆の順序ではそれが可能でない場合もあります。最後に、耳の病気を患っているダイバーにとっては、2本目に深く潜ると耳抜きが難しくなることがあります。

しかし、重要な点は、いずれもDCSリスクとは関係ないということです。これは重要なポイントです。というのも、最初の記事を思い出していただきたいのですが、私の意図のひとつは、DCSリスクについての理解を深めることだと述べています。科学的根拠がそうでないと言っているにもかかわらず、リバースプロファイルダイビングでDCSのリスクが高まるとダイバーに伝えているのであれば、DCSリスクに対する理解を深めるどころか、むしろ減らしていることになります。これは重要なことではないと思われるかもしれませんが、もし減圧理論の重要な原則があり、インストラクターが基本的な安全ルールとして教えているにもかかわらず、科学的には正しくないと言われているのであれば、ダイバーは他のどのような重要なルールが正しくないと言われているのか疑問に思うかもしれません。

科学的根拠が正しくないことを示しているにもかかわらず、最初に教えられたことだからという理由でルールに固執するのは、誤解を広めるだけであり、まさに神話が生まれる理由になるのです。だから、今度誰かが「一番深く潜ったほうが安全だ」と言っているのを聞いたら、まずその根拠を聞いてみてください。

念のために言っておきますが、浮上中に息を止めてはいけないというルールは、今でも有効なアドバイスです。


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