海で遊ぶ前に!! 潜水事故レポートから海の安全を考えましょう。
投稿者:加藤 大典
はじめに
本レポートは、国内で報道された潜水事故をもとに、事故の傾向を分析し、安全教育へ活かすことを目的として作成しています。個別事故の詳細な検証や関係者の評価を目的としたものではありません。また、事故原因の多くは現在も調査中であり、本レポートでは報道内容から読み取れる傾向のみを集計しています。
事故から学び、次の事故を防ぐために
ダイビングは、多くの人に感動や発見を与えてくれる素晴らしいアクティビティです。
その一方で、安全に楽しむためには、適切なトレーニングと準備、正しい知識、そして状況に応じた判断が欠かせません。
SDI JAPANでは、この1年間に国内で報道された潜水事故・マリンレジャー事故を整理・分析しました。
目的は事故を批判したり、不安をあおることではありません。
事故から学び、同じ事故を繰り返さないためです。
この1年間で最も多かった事故は「スノーケリング」
今回集計した事故では、
・スノーケリング 22件(44%)
・スクーバダイビング(レジャー)18件(36%)
・その他 8件
・業務潜水 2件
という結果でした。
スクーバダイビングよりも、スノーケリング事故が圧倒的に多いことが分かります。
「潜る深さが浅いから安全」そう考えてしまう人も少なくありません。
しかし実際には、水面で行うスノーケリングだからこそ起こる事故が数多く存在しています。
また、スクーバは認定制度があり、ある程度のトレーニングをされたダイバーが活動していますが、
スノーケリングは、自己流で行っているスノーケラーによる事故が多いことも考えておかなければなりません。
スノーケリング事故で目立ったこと
最も多かった要因は、
・ライフジャケット未着用
でした。さらに、
・単独行動
・波や流れを軽視した海況判断
・中高年の体調急変
・注意報発令中の遊泳
などが重なった事故が非常に多く見られました。
ライフジャケットを着用していれば助かった可能性がある事故も少なくありません。
スクーバダイビングでは何が多かったのか
スクーバダイビングでは、器材トラブルよりも体調不良や意識消失が多く見られました。
また、「少し苦しい」「浮上したい」「疲れた」
という小さな異変のあとに事故へ発展したケースも目立ちます。
ガイド付きツアーであっても事故は発生しています。
つまり、ガイドがいるから安全ではなく、自分自身も体調を管理し、無理をしないこと
が重要であることを示しています。
事故は一つの原因では起きない
事故調査では、「○○が原因だった」と一つで終わることはほとんどありません。
例えば、
・ライフジャケット未着用
・波浪注意報
・単独行動
・疲労
・中高年
・慣れ
こうした複数の要素が重なった結果として事故になります。
事故は突然起こるように見えても、その前には必ず小さな危険が積み重なっています。
SDIが大切にしていること
SDIでは創設当初から、「安全は技術だけではない」という考え方を大切にしています。
安全とは、
・正しい教育
・適切な判断
・バディとのコミュニケーション
・無理をしない勇気
・継続的なスキルアップ
これらすべてを含めた考え方です。
認定カードを取得した瞬間がゴールではありません。
そこからが、本当のダイバーとしてのスタートです。
私たちが事故から学ぶべきこと
今回のレポートを見ると、多くの事故は特別な環境で起きているわけではありません。
観光地。人気ポイント。経験者。ガイド付きツアー。
誰にでも起こり得る環境で事故は発生しています。
だからこそ、「自分だけは大丈夫」という思い込みが、一番危険なのかもしれません。
最後に今回のレポートは、報道された事故をもとに集計・分析したものです。
事故の詳細な原因は現在も調査中のものが多く、ここで示した内容は現時点で確認できる情報をもとに整理しています。
事故を責めることではなく、事故から学び、一人でも多くのダイバーが安全に海を楽しめること。
それが、このレポートを公開する理由です。
SDIが目指している安全とは
SDIは創設以来、一貫して「安全は教育から生まれる」という考え方を大切にしてきました。
安全とは、ルールを守ることだけではありません。
正しい知識を身につけ、自ら考え、状況を判断し、必要であれば潜ることを中止する勇気を持つこと。
そして、インストラクター・ガイド・ダイバー・ショップが一体となって安全文化を育てていくことこそが、本当の意味での安全だと私たちは考えています。
今回まとめた事故の中で、SDIインストラクターが担当したレジャーダイビングにおける事故はありませんでした。
これは偶然ではなく、日頃から安全を第一に考え、現場で真摯に活動してくださっているSDIインストラクター、SDIダイブセンター・ファシリティの皆様の積み重ねによるものだと感じています。
しかし、だからといって安心しきってよいとは考えていません。
事故は経験の有無や教育機関に関係なく、いつでも、どこでも起こる可能性があります。
「今まで事故がなかったから大丈夫」
この考え方こそが、安全において最も危険な油断です。
だからこそSDIは、これからも現状に満足することなく、
安全基準の見直しや教育内容の改善、インストラクター教育の充実を続け、より安全なダイビング環境づくりに取り組んでいきます。
忘れてはならない事故
SDIダイバーの事故はありませんでしたが、この1年間には、SDIインストラクターの一人が業務中の事故により亡くなられるという、大変痛ましい出来事がありました。
心より哀悼の意を表するとともに、ご遺族の皆様に改めてお悔やみ申し上げます。
この事故は、私たちにとって決して忘れてはならない出来事です。
ダイバーの安全を守る立場であるインストラクター自身も、常に危険と隣り合わせで活動しています。
SDI JAPANでは、この事故を風化させることなく、同じ悲しみを繰り返さないために「海の安全をつなぐ会」を開催しました。参加したメンバー全員で故人を偲びながら、「どうすれば同じ事故を防げるのか」「インストラクター自身の安全をどう守るべきか」を真剣に話し合いました。
ダイバーの安全だけでなく、現場で活動するインストラクターの安全を守ることも、教育機関として果たすべき大切な責任だと考えています。
事故から学ぶことが、次の命を守る
事故は決して起きてほしくありません。
しかし、事故が起きたとき、その経験を共有し、原因を分析し、教育へ反映させることはできます。
それが、亡くなられた方への最大の敬意であり、未来のダイバーやインストラクターの命を守ることにつながります。
SDI JAPANはこれからも、
「事故を隠さない」
「事故から学ぶ」
「教育によって事故を減らす」
という姿勢を大切にしながら、日本のダイビング業界全体の安全性向上に貢献してまいります。
安全とは、ゴールではありません。
毎日の積み重ねであり、終わりのない取り組みです。
これからもSDIは、インストラクター、ダイブセンター、そしてすべてのダイバーの皆様とともに、「安全文化」を育て続けていきます。
一人ひとりが安全について考え続ける文化を育てること。
それがSDI JAPANの使命であり、私たちが目指すダイビング教育です。
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